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​陸上自衛隊機の世界

陸上自衛隊の航空部隊は、地上部隊を支援するために各種航空機を用いて空中機動、人員輸送などを行う。また災害発生時は方面通信群と連携して被災地の近傍または上空から撮影した映像を衛星回線を介して主要司令部に配信することで、災害派遣部隊の迅速な編成に寄与する・

航空科における​最大の部隊単位は中央即応集団に隷属する第1ヘリコプター団(木更津駐屯地)で、各方面隊に方面航空隊、各師団および旅団に直轄の飛行隊(第12旅団および第15旅団はヘリコプター隊)がある。

​陸上自衛隊航空機の代表的なもの

​AH-64 対戦車ヘリコプター ロングボウアパッチ

AH-64 ロングボウアパッチ

冷戦期のヨーロッパで、ソ連戦車を駆逐するためにアメリカが開発したのが戦闘ヘリ「アパッチ」である。量産は1986年から開始された。以来、ステンレス鋼と複合材を多用した機体構造を持つこの空中戦者とでも呼ぶべき戦闘ヘリは、コソボ、イラク、アフガニスタンと数々の戦場に投入されてきた。

陸上自衛隊が2005年より取得を開始したのは、このアパッチにロングボウ火器管制レーダーを追加したAH-64D「アパッチ・ロングボウ」である。

このロングボウモデルは、イラク戦争で猛威を振るい「地上最強のヘリ」とも呼ばれた。その理由がレーダーのみならず武器のすごさである。

機種下面に装備された30mm機関砲は走行車両をハチの巣に変える。

胴体左右のスタブ・ウィングに搭載されるヘルファイヤ対地ミサイルは主力戦車さえも容易に葬り去る。だが、1機当たり120億円を超える調達価格の為、13機で調達を打ち切っている。

​AH-1S 対戦車ヘリコプター コブラ

AH-1S 対戦車ヘリコプター (ヒューイ)コブラ

1967年にUH-1をベースにベル・ヘリコプター・テキストロン社(当時)が開発した世界初の本格的な攻撃ヘリコプターで、陸上自衛隊では2015年3月末時点でこのAH-1Sを60機保有している。

本機の最大の特徴は幅99cmという非常にスリムな胴体と、搭乗員をタンデムに配置したことである。これによって前面面積はUH-1の約3割にまで減少され、速度の大幅な増大と低視認性がもたらされた。コクピットは前席が射手兼副操縦席で1段高い後席が操縦席となっている。

武装は機種下面のターレットにはM134 7.62mmミニガンと毎分400発の八社が可能なM129グレネードランチャーの搭載が可能である。

なおAS-1Sアップガン型以降の機体ではユニバーサルターレットに換装され発射速度毎分680~750発の20mmM197三砲身ガトリング砲を搭載するようになった。胴体中央のスタブウイングには4か所のパイロンがあり、ミニガンポッド・ロケット弾ポッド・TOW対戦車ミサイルなどの兵装を最大で700Kgまで装備することが可能である・。

​OH-1 偵察ヘリNINJA

OH-1は、川崎重工が製造を担当した純国産の偵察ヘリコプターである。

各師団の飛行隊が運用してきたOH-6D観測ヘリの老朽化に伴い、1992年より開発が進められ、1996年に初飛行し2000年から配備が開始された。

平べったい機体デザインが特徴で、これは表面積を極端に小さくすることで敵のミサイルをかわしやすくし、生存性を強化した結果であり陸自も配備しているAS-1Sに倣った形である。

コクピットも前後に2名が座るタンデム配置を採用し、前席がパイロットで後席が観測手となっている。

OH-1は機動性にも優れていて、特に空中でのホバリングを安定させるシステムは世界最高水準に達している。

​このほかこのOH-1には、OH-6Dにはなかった自衛用の武装が搭載され、91式携帯対地誘導弾を使用した空対空ミサイル(SAM-2)4発を搭載可能となっている。

​UH-1 汎用ヘリ

UH-1(イロコイス)は、アメリカ合衆国のベル・エアクラフト社が開発したモデル204/205/212ヘリコプターのアメリカ軍における制式名称で、米国はは後継機のUH-60ブラックホークに置き換えが進んでいるが日本の陸上自衛隊を含めて多くの国々では現役である(生産機数16000機以上)

UH-1B:富士重工業が1962年(昭和37年)から陸上自衛隊向けにUH-1Bのライセンス生産を行い、1972年(昭和47年)までに90機を納入した。全機退役済み。

UH-1H:UH-1Dのエンジン強化型.87式地雷散布装置を機外側面に取り付けることが出来る。最終生産8機は暗視ゴーグル対応コクピットとなった。

順次退役している。

UH-J:富士重工業におけるUH-1Hの改良型で陸上自衛隊向け。

​エンジンをAH-1Sと同じT53-K-703に換装しワイヤーカッターなどを装備したものであり、ベルとの共同開発をベースとしているが、80%を国産技術としている。

​OH-6D 偵察ヘリ

OH-6Dは、ヒューズ・ヘリコプターズ社が開発した小型ヘリコプターである。

川崎重工業がOH-6Aの日本向けOH-6J及び民間向け369HSをライセンス生産し、1969年(昭和44年)-1979年(昭和54年)まで陸上自衛隊が観測機として117機、海上自衛隊が教育用に3機を導入し海上保安庁でも採用した。同年からはOH-6Dに切り替えられ、1997年(平成9年)の生産終了までに陸自に193機、海自に14機を納入し、海保、民間用なども生産した。川崎での延べ生産数は387機に上る。陸上自衛隊向けのD型は生産途中から、暗視ゴーグル対応操縦席、赤外線監視装置、赤外線照射装置が追加されている。

陸上自衛隊では1997年(平成9年)から後継の観測機である川崎OH-1の調達が進められたが、各対戦車ヘリコプター隊への配備にとどまったことから、今後もOH-6Dの運用が続けられる見込みである。また、陸上自衛隊のヘリ操縦士養成に練習機として使用されたTH-55Jが退役した後は、専らOH-6Dが使用された。2015年2月20日(平成27年)陸自航空学校宇都宮校においての、第197期陸曹航空操縦課程(OH-6コース)の卒業までOH-6Dは練習用ヘリコプターとして使用され、その後は後継のTH-480に一本化された。

2015年(平成27年)3月末時点での陸上自衛隊の保有機数は48機である

陸曹航空操縦学生課程は、陸上自衛隊に入隊、各部隊で通常数年間の勤務中に選抜を受けて陸曹に昇任、さらに1年経過してやっと受験資格(受験資格は受験年の1月1日以前に3曹に昇任した、26歳未満の者)が得られる。当初から「操縦要員」のみの選抜を行わなず、一定以上の地上部隊での経験が必須となっている点で海空自衛隊の航空学生制度と大きく異なっている。学生の割合では陸上自衛隊生徒(現:高等工科学校生徒)から3曹になった隊員が最も多く、次に一般曹候補学生(平成18年度募集終了)出身者が大半を占めている。

防大・一般大卒幹部(B・U)が任官後、航空学校霞ヶ浦校で教育が実施されている「幹部航空操縦課程(略称POC(Pilot Officer Course))」を経て操縦士となるケースもあるが数は少ない。近年では女性の航空操縦学生の採用(攻撃ヘリコプター以外)も行われている。

陸上自衛隊では、警視庁航空隊や都道府県警察航空隊のヘリコプターパイロットの養成を受託しており、派遣された警察官も共に訓練を受けている。なお陸上自衛隊は固定翼の練習機を有していないため、LR-2のパイロットは海上自衛隊の航空学生と共に小月教育航空隊で訓練を受ける。

陸上自衛隊は、地上の任務部隊を支援することを目的として自前で航空部隊を編成している関係から、入隊当初は各職種部隊に配属し、数年の勤務の後に適性のあるものを操縦士に選抜するという方法をとっている。このため空地の連携が良好な操縦士を育成し、航空科の「航空至上化」を防ぐシステムになっている点が海空自衛隊と最も異なっている。海空航空学生と比較しエリミネート率(パイロットになれない者の割合)が低いのが特徴であるが、近年は不適格者を学生時に排除する傾向が強くなっており、20%程度である。陸上自衛隊の任務における航空科職種の役割が限定されるため、組織内での操縦士の地位が海上・航空自衛隊に比べて相対的に低い点も特色と言える。

​陸曹航空操縦学生(陸自パイロット)になるには

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